日本初!常設宿泊施設「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」とは 〜絶景を独り占めして、ラグジュアリーな城主体験を〜
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日本初!常設宿泊施設「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」とは 〜絶景を独り占めして、ラグジュアリーな城主体験を〜

今回から3記事連載で、長崎県平戸市の城泊の取り組みをお伝えしていきます。今回取材いただいたのは、城郭ライターとしてご活躍されている萩原さちこさんです。


ヨーロッパの古城ホテルのような城ステイ

2021年4月に開業した、長崎県平戸市の「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」。湖畔に佇むヨーロッパの古城ホテルで過ごすような、絶景を独占した城ステイです。

宿泊できるのは、平戸城内に建てられた懐柔櫓。大きな特徴は、宿泊を前提に改築された宿泊施設であることです。本来、天守や櫓は生活の場ではないため、お手洗いや浴室、台所などの設備がなく、宿泊は非現実的でした。宿泊を前提にリノベーションされた懐柔櫓は、それらの心配が皆無。ホテルと同等の快適な城ステイが叶います。

鉄筋コンクリート造の文化財ではない建物だからこそ、実現した事例です。懐柔櫓は、1962(昭和37)年に天守や見奏櫓、乾櫓とともに建てられ、長らく展示スペースや倉庫として使用されてきました。建造から50年以上が経過して老朽化し、改修の必要に直面。宿泊事業が並行して進行していたことからホテル化に舵が切られ、日本初の365日泊まれる城泊施設が誕生しました。

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本丸の東端に建つ懐柔櫓。(撮影:萩原さちこ)


「海に面する絶景」を最大限に活用

平戸城は、平戸島の北部と九州本土を隔てる平戸瀬戸に突き出す標高約53メートルの丘陵上に築かれた城です。平戸海峡大橋をはじめ、穏やかな平戸瀬戸を一望できる景観のよさのが最大の魅力です。

平戸は1550(天文19)年にいち早く開港し、1641(寛永18)年にオランダ商館が閉鎖するまで交易の窓口として機能した歴史があります。戦国時代から江戸時代を通じてこの地を治めた平戸松浦氏は、海外交易による経済的発展と鉄砲等の武器輸入により松浦党内で勢力を拡大し、戦国大名になった一族。平戸オランダ商館や平戸イギリス商館を開設させるなど、外交に通じた大名家でした。

平戸城は、その拠点。港湾を見下ろせ、行き交う貿易船を監視するのにふさわしい立地です。海上や城下町から見上げる姿は、さぞシンボリックだったことでしょう。

江戸時代中期の平戸城を描いた絵図を見ると、東・西・北面の三方は海に囲まれ、平戸湾に面する西麓には城に直結した「御舟入」があります。懐柔櫓は最高所に置かれた本丸の東端に建ち、大パノラマが広がる絶好のロケーション。この場所にはかつて、舟入を望む要地を防衛した櫓のひとつが建っていました。平戸湾を一望していたのは間違いなく、この景観のよさを最大限に生かしているのが「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」の最大の特徴といえそうです。

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南竜崎台場から見る平戸城。(撮影:萩原さちこ)


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1962(昭和37)年に建てられた、平戸城の天守。(撮影:萩原さちこ)


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懐柔櫓や天守とともに建てられた見奏櫓。(撮影:萩原さちこ)


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見奏櫓からの眺望。眼下に平戸湾が迫る。(撮影:萩原さちこ)


1棟貸し切り、という贅沢空間

懐柔櫓は、風光明媚な海岸に佇む1棟貸しのコテージといったイメージ。1階は畳の間もあるダイニングリビングで、2階はダブルベッド2つを配置した眺望抜群のベッドルームが配置されています。ほか、和室コーナー、ウッドデッキ、浴室も完備しています。

テーマは「ラグジュアリーな空間と追体験」。欧米や東南アジア、国内の富裕層をターゲットとし、城主気分を味わえる特別な空間を演出。ファーストクラスのおもてなしを受けながら、1日城主を体験できます。価格は1泊1室最大66万円(サービス料、食事、体験メニュー別)、1日1組(最大5名)限定となっています。


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天守から見下ろす、見奏櫓(左)と懐柔櫓(右)。(撮影:萩原さちこ)


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常設宿泊施設として改修された懐柔櫓。(撮影:萩原さちこ)


平戸の伝統・文化を集約

「平戸島の伝統や文化に浸る空間」をコンセプトに、平戸の歴史・アート・食をブラッシュアップしたおもてなしが用意されています。

たとえば内装にも。平戸や長崎の技術と文化が詰まっています。リビングダイニングルームの壁画に描かれている蝶は、9代藩主の松浦静山が創設した、楽歳堂収蔵の図譜「蛺蝶譜」が由来。九州出身の琳派の画家である小松孝英さんの描き下ろしで、美術館にいるような厳かな空間になっています。

桃山時代後期から江戸時代の流派である琳派を採用したのは、日本の美意識を意識してのことだそう。伝統とモダンを融合させた華やかさをインテリアの基調とし、金の上にグレーに近い黒色の三重塗装を施して、居心地のよい空間がつくられています。

そのほか、江戸時代後期にオランダを起源とした技術が長崎から江戸にもたらされたことで生まれた江戸切子をダイニングテーブルに取り入れているのも、長崎の歴史に触れられるところ。ガラス張りの展望バスルームには諫早産の大理石を用いるなど、地元産へのこだわりが随所に見られます。


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リビングダイニングルームの壁画。(提供:平戸市)


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松浦氏にちなみ、蝶が描かれている。(提供:平戸市)


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江戸切子風のダイニングテーブルも採用。(提供:平戸市)



専属シェフによる地産地消の特別フルコース

とりわけ料理には、強いこだわりが詰まっています。平戸島の自然の恵みを丸ごと堪能できる地産地消の創作フルコースは、ホテルオークラなどで研鑽を積んだ一流の専属シェフによるオリジナル。どこのレストランを訪れても味わえない、地元の旬の食材を吟味した和テイストの創作フレンチフルコースです。

海に面した平戸半島は、魚の宝庫。うちわ海老やヒラメ、タイなど採れる魚の種類が豊富で、かつ湾の場所によって獲れる魚が異なるのも特徴です。地元の海を知り尽くしたシェフが、旬の食材を吟味して調理してくれます。

平戸の大自然の中で育てられた、平戸牛や平戸島豚などの肉料理も絶品。ウェルカムドリンクには地元産のオレンジ「平戸夏香」のジュースが並ぶなど、どこまでも地元産にこだわっています


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平戸の旬の食材を使った、創作フレンチフルコースを提供。(提供:平戸市)


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専属シェフによるオリジナル料理が並ぶ。(提供:平戸市)



特別プログラムでの異文化体験も

さまざまな特別プログラムが用意されているのも魅力です。平戸島の自然を満喫しながらの乗馬体験、初代藩主の松浦鎮信が興した武家茶道の一派「鎮信流」の茶道体験和服の着付け武士道体験、国指定重要無形民俗文化財「平戸神楽」の特別鑑賞など、希望に合わせてコンシェルジュが体験メニューをアレンジ。平戸島が紡いできた歴史と文化を、五感で体感できます。


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特別プログラムのひとつ、乗馬体験。(提供:平戸市)


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「鎮信流」の茶道体験。(提供:平戸市)


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お茶菓子は「カスドース」「牛蒡餅」などの平戸銘菓。(提供:平戸市)


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国指定重要無形民俗文化財「平戸神楽」の特別鑑賞も。(提供:平戸市)


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世界遺産の構成資産のひとつ、春日集落。(撮影:萩原さちこ)


取材・文/萩原さちこ

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